letting go

とうとうこんなことを打ち込みたくなるとは誰が想像できただろうか。いつか急に死んだ時に誰かがこれを目にしたらいいなと思う程度に打ち込んでいたことだが、少し恥ずかしい思いを死んだ後にするかもしれない。どんなに濃い思い出も経験も時間は酷いことに色を褪せさせ、思い出すのも難しくさせる。そうなると、大切だった思い出も新しいことに上書きされ、新聞の号外が人の目を引くように注目度や重要度が自分の心の中で下がってしまう。だからこそ、今の思いが大事であり、今忘れたくないことを将来のためにもがくように打ち込もう。

 これは私にとって大切で、今は乗り越えようとしている。俗にいう失恋というやつであり、後に引いても前にひっぱっても自分には無関係である類の事柄だと思っていた。思っていた以上に人間は他人に情を移すと弱くなるらしい。

 

最初の出会いは、学校の芝生の上で近くにいた。皆が口を揃えていう、「彼氏が欲しい」という言葉に同感できない自分はどこか人間の本質的なところが欠けている人間なのだと感じていた。さらに自分自身の自信がなかったことと人間に対する疑いがこの歳になっても拭いきれていなかった。それほどなら一人で生きれば良いというのが道理だろう。そう、だからそうしていた。避けて、拒否して。最初に出会った日は自己紹介と雑談ぐらいで終わった。次出会うときは私の友達がコンタクトを取っており付き添い程度であった。次会うときは彼から私にコンタクトを取ってきて会うことになった。付き添い程度の私だったため、なんだか友達に悪い気がした。お昼ご飯を食べて、好きな曲、趣味の話をする。まだ、他人行儀で気を遣う。この人は何を考えているのだろうか。心斎橋まで行きイングリッシュカフェに招かれる。英語が話せない。けど、定期的にアイコンタクトを取り笑いかけてくれる彼がいたから嫌な空間ではなかった。少し心を開き話しかけてみる。ご飯に行く、隣にいてくれる。英語が話せない自分の隣なんかでいいのだろうか。ヨーヨーを教えてくれる。あまりにも優しすぎではないだろうか。自分はこんな待遇を受けたことがない。後で嫌な思いをするのであれば今なら引き返せるから少し離れてみようか。クラブに行くことになった。気が進まないが彼がいるなら行ってもいいかも。お酒を待っている間に日本人ではあり得ない質問が飛ぶ。戸惑いを隠しながら嘘をついた。いつものことだ。そうかこの人をこういうふうに私を意識しているんだ。お酒が入り、足が少し震えている。やめておこう。隣で同伴していた彼が手をさすってくる。彼にはバレたくないけど、これを振り解くほどの英語力も知識もなかったからそのままにした。気づかれたかな。雨が降っている。急な階段、絶対にレディファーストを守っていた彼が前に出てエスコートしながら手を繋ぐ。振り解くかなと思ったがそのままだった。酔っていたし簡単に勇気が出て、繋ぎ方を変えた。男の人のてってこんなにでかくて暖かいんだと思いながら力を入れる。けど少し気持ち悪い。なんだかわからないけど、知らない人に恥ずかしい部分を見られみたいに心が収まりきっていない。酔っているけど思考はフルで回る。まだ大丈夫そう。飲みが進んでいない様子を見て私のてからお酒を取って飲み干す。なんでこんな優しいのかな。なんで気づいたのかな。もう帰ろうとしているところ、始発はまだ来ない。その時間までは一緒に過ごそう。ずっと手を繋いで特に会話という会話もなく朝の鴨川を歩いた。ポーカーフェイスのくせに心臓は騒がしく慣れない状況に拒否する体は疲れていて、早く帰りた。そんな中、キスをしていいかと言われた。同伴した彼からしてもよい雰囲気なのではと聞いたと。あなたの意見ではないところと声質が上がる日本語に嫌気がさし、背中が凍る。嫌だ。断ろうと決め日本語で説明する。悲しそうにするも手を繋いで歩くとどこかで囁く。毎度のようにおそらく発展するであろう状況から逃げてきた自分はいつもと同じだと思っていたが、どこか興味があり、経験を意識した。まあいっかと駅のホームに着く前に承諾した。一回だけなら、これで自分の心と天秤にかけてみよう。私の心がどんな反応するか。情けで許可したの思った彼は何度も大丈夫かと聞いてくる。あなたの理性はどこにあるのだろうか。他の人からの意見だからだろうか。駅のホーム、観光客が賑わうこの駅はさすがに朝5時では人が一人。これならいいかも。周りを確認する。右左と見たところで、大きな手が左から優しく支え顔が近づく。ここでもやはり優しい。柔らかい。そして背中をさする。ここで落ちた。数日前とは何かが明らかに違う自分に恥ずかしさを覚えながら、また始まった時間を過ごす。数日間、彼を避けた。