letting go 4

大きな何かを失ったかのように、日常のある瞬間にポツリと心が思い出す。分かるでしょ。匂いとか一緒に歩いた道とか景色とか、最後の日迎えにきてくれて雨の中傘を刺して隣で一緒に歩いたこととか。日常の間にあなたの愛を心が探しているように思える。人の感情はもっと繊細で悲しいとか嬉しいとかそんな曖昧な気持ちだけを抱えているわけではない。喪失感・愛おしい・懐かしい・悲しいそんな感情がコンマの世界で心が感じている。一気にそんな濁流に流されて、残った引き波のような余韻が静かに帰っていく様子を眺めると静けさが増す。そして、祈りにも似た願いや後悔が頭をよぎる。もっと強く抱きしめておけば、もっと匂いに包まれておけば、もっと伝えとけば。最近さらに気づいたことは人は思いのほか苦しみや悲しみに駆られながらも生きることはできるし、隠すこともできる。さらに、愛が欠落すると生きることを考え始める。誰かに求められて誰かを求めながら生きることが人間の本質的な欲望なんだと知る。

あれから一週間が経ったらしい。あまりにも長い一週間だった。とっくに痕は消え、彼が残した影もなくなる。どうにもならないこの感情にいつの間にか気づいたら終止符が打たれていた。とならないようにこの感情を殺さずに思い詰めて行こうと思う。